参議院議員 山東昭子 さんとうあきこ  
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家族みんなが食事をとって話し合う機会がめっきり減った。 キレる子ども≠スちが増える原因もこのあたりにあるといわれる。 その解決策として食育≠ェある、と訴える山東昭子参議院議員。 しかも、それが地域おこしにもつながるという。 諸問題を解決に導く食育≠フ今を、行革国民会議事務局長の並河 信乃(なみかわ しの)さんが聞いてみた。



食育≠見直すことで 諸問題解決に役立つ
並河信乃
キレる子どもたち≠ノよる犯罪が増えていますね。これが、食生活と密接に関係しているという説があります。

山東昭子・参議院議員
そうなんです。朝食を食べない子が、小学生で16%、中学生で20%といわれています。それが学力低下やキレる子を作っているんです。
また、食生活の変化による影響も大きいです。フランスでは親子で食事をするのが6割を占めるといわれていますが、日本では3割程度しかありません。一緒に生活をしているのにバラバラで、まさに「個食の時代」といえます。  親子で食卓を囲むことによって、子どもがどんな生活をしているか、どんな友だちがいるか、というように、子どものことを聞き出すことができるし、子どもにとっても「お父さん、今はどんな仕事しているの」というように、親のことを知るための場にもなるのです。しかし、現在はそういうことがあまりにも少なすぎます。食事はすべての基本です。そして食事を通して健やかな生活を送る術が食育≠ネのです。

並河
この食育≠フ浸透を目指した『食育基本法』が、今年の6月に成立しました。自民党食育調査会長として、法案成立に尽力されたと思います。
そもそも食育≠ニはどういうもので、『食育基本法』がどういう法律なのか、基本的なことからお聞かせください。


山東
食育≠ニいうのは、明治時代に食育≠ニいわれ、知育、徳育、体育、才育とならんで使われていた言葉ですが、いつの間にか忘れられてしまいました。ですから、食育≠フ原点を見つめ直すと同時に、日本特有の和食文化や食生活も見直していこうと考えたのです。 『食育基本法』がはたす主な役割は、食育≠ノついての基本理念を明らかにして方向性を示すこと。そして国、自治体および国民の食育の推進に関する取り組みを、総合的に推進することにあります。  これまで、農林水産省や厚生労働省、文部科学省などが、独自に食生活に関する取り組みを行ってきましたが、栄養バランスなどの関連データ数値がそれぞれ微妙に異なっており、意識的に明確化しなければバラバラのままになってしまいます。

また、これまでボランティア団体などが、学校の現場で栄養指導などをした場合、活動の位置づけがあいまいでした。が、これからは法律によって明確になりますので、学校が付けた予算内で、食育指導を行えるようになります。

並河
それは一歩前進ですね。ところで、食育基本法の成立までには、反発などはありましたか。

山東
審議の過程でも、野党から「食事は国から、イチイチこれを食べろなどといわれるものではない」とか、「女性を台所に引き戻すような法律をつくるな」という反発の声がありました。

並河
それも一理ありますが、早い時期から料理や食事に関心を持たせることは、良いことだと思います。ただし、この法律は国から個人にいたるまで、あまりに広範囲にわたっており、シッカリと焦点をしぼって活動しなければ、浸透していかないでしょう。

山東
そうですね。ですから自治体の首長にも協力してもらって、地域の方々が独自に取り組んでいけるような形を目指しています。  今の地方は、昔と違って予算が潤沢ではありませんから、まちづくりをどうしたらいいか、心配しているところが多いです。私は「これからはアイデアの時代。国のお金とか自治体のお金を使って何かつくるのではなくて、民間の力を借りながら、この地域に来なければ食べられないというものを生み出したらどうですか」とアドバイスしています。



食育≠推進することは 地域おこしにもつながる
並河
今のお話を聞いていると、食育≠ヘ地域おこしにも役立ちそうですね。

山東
食は地域と密接にかかわっていますから、当然です。ただ、地元の人が、自分たちの地域の良さをわかっていないケースがよくあります。シッカリ足下を見つめ直して、「この地域にはこんな良さがあったんだ」と再発見してもらわないとダメだと思います。

並河
たしかに駅の売店とか道の駅でもそうですが、その地域にふさわしいもの、地域の個性が出ているものを置くべきですね。  高速道路のサービスエリアも、立ち食いソバとかカレーライスとか、地域の個性とはまったくかかわりがありません。地域の農産物とかをもっと前面に出すべきでしょう。

山東
本当にそうですね。自覚の問題だと思いますし、遊び心≠熨蜴魔セと思います。これからの地域は、景観と食へのこだわりを見せなければ人が集まらないでしょう。

並河
旅館は板前さんを雇って競うのもいいですが、地域の特産品をキチッと出せる施設づくりも必要ではないでしょうか。高級旅館だけでなく、一般の旅館もそのあり方を見直す必要がありますね。


元気なシニアが ふるさとリーダーになる!!
山東
そうしたことを進めていくためには、やはり地域でマインドを持ったリーダーが必要だと思います。まずは、ひとりでいいのです。その人を中心とした運動がうまく軌道にのれば、つぎは農業、料理、健康などそれぞれの分野でリーダーを育てていけばいいと思います。
並河
地域リーダーを育てていくために、何か具体的な活動をされていますか。

山東
地域リーダーの育成が目的ではありませんが、今年の4月から食育マインド≠フ浸透を目指すNPO法人『元気な120才を創る会』を立ち上げました。テレビでおなじみの服部栄養専門学校長・服部幸應氏が代表理事で、私も理事を務めています。服部先生も、食育≠テーマにした講演会などを精力的に展開しています。 「120才」とありますが、高齢者だけを対象にしたNPOではありません。「いつまでも元気で長生きしましょう」という思いを込めて命名しました。日本人の寿命は延びていますが、寝床で生き長らえるのも寂しい話です。せっかくだったら、楽しく長生きしたいじゃないですか。

並河
豊かな老後をデザインするというのは、現在の日本にとって大事なことです。団塊の世代が大量に退職する「2007年問題」が間もなくやってきます。50〜60歳代の世代にとっても、深刻な問題です。

山東
そのとおりです。まずは、健康な体をつくり、気のいい友だちとあっておしゃべりすることです。ほかにもオシャレをする、地域ボランティアをする、スポーツをする、旅行をする、パソコンをやってみるなど、こういった活動を通して健康寿命≠延ばしていくことが大切です。

並河
なるほど。健康寿命≠伸ばすためには、食育≠ェキーワードだということですね。

山東
その通りです。このNPOでは、以下のことを柱に食育活動をすすめています。ひとつが「生産者、消費者サイドが安全な食材を正しく選べる知識や行動を育むこと」。ふたつ目が、「小さい頃から食事作法についてしつけを身につけさせること」。3つ目が「食料や農業に関する問題を意識すること」です。すでに、普及のための啓発セミナーなどを展開していっています。

並河
ひとつ目は、とくに重要ですね。最近は食の安全が揺れているだけに、人々の関心も高まっています。食品のトレーサビリティ(追跡履歴)も、あって当然という時代になりつつあります。

山東
自分が口にする食品が誰によってつくられたかを知りたいと思うのは当然のことでしょう。  今は、インターネットの発達もあり、生産者と消費者の距離はグッと近くなりました。このことで、今までは裏方だった生産者も「私がつくった野菜です」といって、しっかり主張できるようになりました。しかも、そうすることで安心感が生まれ、多少高くても買ってくれるのです。

並河
ふたつ目の「小さい頃から食事作法についてしつけを身につけさせること」という項目には違和感を持ちます。かつては家族の中であたり前のように教えていくことでしたから。しかし、一家団らんの食事がなくなった今ではこれすら難しいのでしょうね。  3つ目の「食料や農業に関する問題を意識すること」についてですが、これまでは国や農協、大企業にまかせておけばよかったわけですが、今では「何が安心かわからない」、だからこそ自分の身は自分で守らなければならないし、その術を身に付けなくてはならない、それが食育≠ニいうわけですね。

山東
食育≠ニいうのは、一人ひとりの心構えや生活態度、地域住民の意欲、リーダーシップにかかっています。だからといって、堅苦しくならないように運動していきたいと思います。

並河
そもそも食べる≠アとは楽しいことです。食育≠ェその楽しみを膨らませていくものであってほしいですね。本日はどうもありがとうございました。



プロフィール
並河 信乃(なみかわ しの)
行革国民会議事務局長。故土光敏夫経団連会長の秘書として土光臨調に参加。以後、民間の立場から地方分権など行革推進の論陣を張る。

山東 昭子(さんとうあきこ)
74年参議院全国区に32歳の最年少で初当選。以後5回当選。参議院で環境委員長、外務委員長を歴任。自民党では女性局長、環境部会長を始め教育・福祉・住宅対策・外交関係を担当。90年国内で6人目の女性大臣として科学技術庁長官に就任。現在は、自民党両院議員総会長、自民党食育調査会会長などを務める。

この記事は、『月刊コロンブス』2005年12月号に掲載されたものです。
最初の4点の写真は、『月刊コロンブス』2005年12月号からいただいたものです。下記の2点の写真は、山東昭子が地域で講演した際に撮ったものです。

なお、『月刊コロンブス』は全国の書店で好評発売中。
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